熊猫日誌

熊猫の記憶の物置

大家さんがねこ

今の住まいに越してきたのは、2010年12月。
まもなく9年になる。

その前は、ここから2キロほど東に行ったところだった。そこには同棲時代含めて、8年間住んだ。三階建て木造アパートの最上階、角部屋。ペット不可。駅から徒歩20分。2DK。
最後の一年間くらいは、近所の騒音に悩むようになった。管理会社から注意をしてもらってもなかなか改善されず、悩んだ結果、
「そうだ。いつまでもここに居なくてもいいじゃん」
となった。ヤケになっていたと言っても過言ではない。

折角だから、ペット可物件。
夫も私もねこが好きで、実家で飼っていた。ねこは20年ほど生きるので、最期まで看取るとなると、自分たちが40歳前半くらいまででないと無理だと思っていた。当時42歳。ちょうどいい。
そして出来たら、一部屋増やしたい。2LDKか3DK。

不動産屋で幾つかの物件を紹介され、その中に今の住まいがあった。
「あ、ここがいい」
と即座に思った。
築は古いものの、メゾネットタイプ。すなわち、家の中に階段がある。
これ、ずっと賃貸住まいだった私には、憧れだったりする。家の中の階段。
駅からはさらに10分遠くなったけど、20分も30分も変わらない(変わる)。
あっさりとここに決めたのだった。

ここに住み始めて間もなく、我が家にねこの訪問があった。
写真を撮ったはずなのだけど、どこを探しても無い。とにかく美しいロシアンブルー。この子は隣(メゾネットの隣の大きな戸建)の大家さんちの飼い猫。名札がついていて、苗字が大家さんちだった。名前は“おなべ”。何故。
「アンタ、新入りね」
とでも言っているような表情。
サッシを開けると、「どれどれ、どんな室内か見せてもらおうかしら?」と入って来ようとする。いやいや、まだ段ボールとか夫の楽器とかがゴロゴロあるのでね、怪我でもされては一大事。丁重にお引取りいただいた。

やがて我が家でも三毛猫姉妹とのご縁ができた。
我が家の契約は大家さんと直接交渉するわけではなく、間に管理会社が入る。ねこのことはきちんと管理会社に言わなければならない。
「猫は一匹までっていう想定だったんですよねー」
そんなん聞いていない。我が家の姉妹、譲渡条件の一つが“姉妹一緒”にってことだった。その旨を告げたところ、「では大家さんに聞いてみますねー」と(ムダじゃないかしらー?)という気持ちが透けて見える声での返事。
あっさりと「二匹でいいとのことです」と連絡が来たのは、翌日だった。速い。

大家さん。滅多に会えないけれど、ねこ好きなのがよくわかる。
大家さんのご自宅を建て替えしたためか、あの美しいロシアンブルーは外に出てこなくなった。その方がいい。我が家周辺は住宅街なのに交通量が多くて、外飼いには危ないと思っていたから。

そしてこの夏の終わりに、エアコンの調子が悪くなった。
カタカタカタカタと、異音がする。不吉。
このエアコンはすでに取り付けてあったもので、製造年月日等見ると、軽く十年は超えている。
リビングにあるこのエアコンは重要で、真夏の暑さから三毛猫姉妹と夫のパソコンを護る役目を担っていた。途中で止まろうものなら……想像するだけで震え上がる。

管理会社に電話して修理屋が来てくれたものの、しかし異音が止まってしまっていた。症状が出てこない。これでは直しようが無い。修理方法によって料金が変わってきて、管理会社はお金を出す大家さんにお伺いをたてなければいけないという事情もある。出来たら取り替えていただきたいのだけど、そうもいかないだろう。
その時大家さんは不在だった。修理人は仕方なく帰り、「今度は音が出ている時に連絡くださいねっ」と、管理会社の人からは電話口でプンスカされてしまった。仕方ないじゃないか。

ところが。

一転、「エアコンを入れ替えることになりました」と連絡が来た。

わー、それがいちばん安心! なんてステキな大家さんの鶴の一声。
実は私の体調不良で延び延びになっていたのだけど、本日ようやっとエアコンが入れ替わった。これで来年の夏は安心。
「大家さん、ほんっとねこたちのことを考えてくれるよねー」
「実は大家さん、ねこなんじゃない?」
なんてアホなことを夫婦で言いながら、ちょっといいお菓子を大家さんちへのお歳暮に選んだのであった。

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せっかくなので、我が家の三毛姉妹の画像を。
当時、やってきた時点で生後10ヶ月くらいのこっこさんたちだった。
現在は8歳の熟女たち。