熊猫日誌

熊猫の記憶の物置

けんちん汁

今日は朝からけんちん汁のことばかり考えていた。

もっと他のことを考えなさいよ。政治のこととか、健康のこと、自分の老後のこととかさ。

それらよりも、冷蔵庫の中味の賞味期限ばかりが気になっていた。
大根はまだもつ。ニンジンと長ネギは、今日生協から新しいのが来てしまうな。お豆腐も。そういえばコンニャクもあるし、油揚げ、シイタケの残り、さらにサツマイモが残ってる。
何しろ寝込んでいた時間が長かったもんで、野菜を予定通りに消費できていないのだった。これらを全部減らすには、けんちん汁を作るしかない。

帰宅して、作った。美味しくできたと思う。夫が3回もおかわりしていたから。

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でもこれって、単なる“具沢山味噌汁”ではなかろうか?

実は必要があって、調べたことがある。
このけんちん汁は、果たして正しいのか?
結構違っていた。
本物のけんちん汁は、材料をごま油で炒めてから煮る、醤油ベースのすまし汁だった。
私のは材料を煮て、味噌で味付け。ごま油は最後にちょこっと入れる。
味噌仕立てのものは、“国清汁”と呼ぶらしい。
もしくは、“味噌けんちん”。

んー? まあ、でも。

私の料理はたいてい母が作ったものを継いでおり、東北は下北半島の育ちである母が、これを“けんちん汁”と呼んでいた。
だからいいんだ。これはけんちん汁。
百の家庭があったら、百通りのけんちん汁があるんだよ。きっと。
美味しかったから、それでOK。


ところでどうして調べたのかと言うと、書いた小説の中でけんちん汁を出したから。
kakuyomu.jp

かれこれ2年くらいはご無沙汰してしまっているけれど、私の趣味のひとつに小説書きというのがある。
この作品は、これまで書き上げたものの中では、一番高評価だった。某大手文学賞、二次予選突破した程度だけども。でも三次で落ちたから、手直ししてアルファポリスという創作ポータルサイトのコンテストに出したら、大賞をいただいてしまった。

この作中に、けんちん汁が出てくる。
「……ふつうは、醤油じゃねえ?」と訝る主人公に、ヒロインは抗議する。
「あんたんちのふつうなんか、知らない。これが、私んちのふ、つ、う!」


美味しいお話。
もしお時間があったら、どうぞ。